人事労務の入口 / 更新 2026-10-19

従業員・応募者・退職者の個人情報と令和8年改正の関係(人事労務の確認の入口)

出典: 個人情報保護委員会の改正法の概要・政令規則の全体像ほか5資料、e-Gov法令検索。2026-10-11に本文を確認。

ノートに書き込む手と、向かいに座る人

総務・人事の担当者向けに、従業員・応募者・退職者の個人情報が令和8年改正のどこに関わるかを整理しました。委員会の資料を検索した結果、従業員だけを対象にした改正項目は確認できませんでした。確認できた4つの場面と、まだ決まっていないことを分けて書きます。

1. 確認できたこと: 従業員だけを対象にした改正は資料にない

委員会の次の5資料の本文を、2026-10-11に「従業員」「従業者」「雇用」「応募」「退職」「労働」「人事」で検索しました。

  • 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律について」(改正法の概要・2026-07-17): 「従業者」が出るのは罰則の説明(第176条・第179条の条文の言い換え)だけです。
  • 「政令・規則等で定める事項の全体像」(2026-08-26)と「今後の取組方針」(2026-07-31)と「政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について①」(2026-09-16): 該当する語はありません。
  • 「同②」(2026-10-01): 「従業員監督」が現行の規律(法第24条)として図に載るだけで、新しい論点としては出てきません。

つまり、確認できた範囲では、従業員・応募者・退職者の個人情報について別立ての改正項目は見当たりません。ただしこれは「従業員の情報に改正が及ばない」という意味ではありません。改正項目は、取り扱う情報の種類や行為(罰則、漏えい等報告、委託、顔特徴データ等)で書かれており、本人が顧客か従業員かで規律を分けた記載を確認できなかった、という意味です。

2. 人事労務の場面と、関係しうる改正項目

従業員・応募者・退職者の情報を扱う場面ごとに、関係しうる改正項目と、このサイトの解説ページを並べました。自社の取扱いが当たるかは、各ページの条件で確かめてください。

人事労務の場面と関係しうる改正項目(確認日 2026-10-11)
場面関係しうる改正項目状態解説ページ
従業者・退職者による名簿の持ち出し個人情報データベース等の不正提供等の罪。条文は「従業者又はこれらであった者」を対象に含める(改正法の概要の*2)。罰則関係は2027年1月17日に施行施行日は確定2027年1月施行の罰則
給与計算・社会保険事務・採用管理システムなどの外部委託委託先自身への義務の明文化(法第30条の3)と、指示どおりに機械的に処理する委託先の義務免除(法第58条の2)。渡す個人データに従業員の情報が含まれても、条文は渡す情報の種類で区別していない契約事項は規則待ち委託先の個人データ取扱い
顔認証での出退勤の打刻、入退室の管理顔特徴データ等の規律。従業員の識別に使う場合も対象になりうる政令・規則待ち顔特徴データ等
従業員情報の漏えい・誤送付漏えい等報告・本人通知の見直し。令和7年度は、委員会が直接受け付けた13,345件のうち従業員情報が985件(7.4%)規則待ち漏えい等報告・通知、件数と内訳
従業員への監督(法第24条)条文は現行のまま。委員会事務局の2026-10-01資料の図にも、安全管理措置・委託先監督と並ぶ現行の規律として載る改正なし(資料の図)安全管理措置ガイドラインの見直し案

法第24条の本文は、e-Gov法令検索(個人情報の保護に関する法律、2026-10-11取得)で「個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない」と確認しました。

情報の種類別に、保管・提供で確かめる条文

人事労務の情報は、種類によって根拠になる法令が分かれます。改正の有無とは別に、現行条文で確かめる入口を並べました(条文は2026-10-19にe-Govで確認)。個別の取扱いが適法かどうかの判断は示しません。

人事労務で扱う情報の種類別の確認点(確認日 2026-10-19)
情報の種類取得・保管で確かめる条文提供・委託で確かめる点関連ページ
健康診断の結果個人情報保護法第2条第3項は「病歴」を要配慮個人情報に含め、第20条第2項は取得に原則として本人の同意を求める(法令に基づく場合などは例外)。労働安全衛生法第66条の3は結果の記録、第104条は心身の状態に関する情報を、労働者の健康の確保に必要な範囲で収集し、収集の目的の範囲内で保管・使用することを事業者に求める労働安全衛生法第105条は、健康診断や面接指導の事務に従事した者に秘密の保持を求める。社内で誰が結果を見られるか、健診機関や産業医とどの範囲で共有するかを確かめる社内周知の要点
マイナンバー(特定個人情報)番号法第20条は、第19条各号に当たる場合を除き、他人の個人番号を含む特定個人情報の収集・保管を禁じる。第12条は漏えい等を防ぐ管理措置を求める番号法第19条は、同条各号に当たる場合を除き特定個人情報の提供を禁じる。第6号は、取扱いの委託や事業の承継に伴う提供を例外として挙げる。給与・社会保険の事務を外に出す場合の委託先の確認は別ページ委託先への確認質問リスト
監視カメラの映像映像で特定の個人を識別できる場合は個人情報に当たりうる。個人情報保護法第21条は取得時の利用目的の通知・公表を求め、取得の状況から利用目的が明らかな場合は例外とする(第4項第4号)。どちらに当たるかは設置の状況による録画を警備会社やクラウドの保管先に預ける場合は委託(第25条)の確認が要る。顔認証と組み合わせる場合は顔特徴データ等の項目が関わる顔特徴データ等、顔認証カメラの周知対応
採用の応募書類履歴書は個人情報に当たる。個人情報保護法第21条第2項は、書面で本人から直接取得する場合に利用目的の明示を求める。不採用者の書類を保管し続けるか廃棄するかは、利用目的との関係で確かめる人材紹介会社経由で受け取る場合は、紹介会社と自社のどちらが何を取得しているかの整理が先になる。応募者の同意なく他社に渡さない扱いかを確かめる人材紹介・人材派遣事業者の確認3項目

表の労働安全衛生法・番号法は、令和8年改正の対象ではなく現行条文です。健康情報の取扱いに関する厚生労働大臣の指針(第104条第3項が公表を定めるもの)の内容は、このページでは確かめていません。

3. 準備として確認できること

個別の判断はできませんが、人事労務の担当者が最初に確かめる点は示せます。

  1. 従業員名簿、応募者の履歴書、退職者のデータが、どの部署のどの場所(共有フォルダ、人事システム、紙のファイル)にあるかを一覧にする。
  2. 退職・異動のときに、アクセス権限を止める担当と手順が決まっているかを確認する。持ち出しの罰則が動く2027年1月17日より前に確かめておく項目です。
  3. 給与計算、社会保険の手続き、採用管理を外に出している場合は、委託先ごとに契約書を探す。確認の質問は委託先への確認質問リストにまとめています。
  4. 顔認証で打刻や入退室を管理していないかを、総務と現場に聞く。
  5. 従業員向けの注意喚起の文面を社内周知の要点で確かめる。

4. 決まっていることと未確定のこと

従業員・応募者・退職者の情報に関係しうる改正項目の状態
項目決まっていること未確定のこと
罰則(持ち出し)2027年1月17日に施行。条文は従業者・退職者を含む個別の行為が当たるかは事案ごとの判断(このサイトでは示さない)
委託先の規律委託先への義務の明文化と免除の枠組み(改正法)免除の前提となる契約事項と契約の方法(規則)
顔特徴データ等改正法に規定。具体的な周知方法などは委任政令・規則の内容と施行日
漏えい等報告本人通知の緩和、違法な第三者提供の報告対象化(改正法)緩和される範囲、速報免除の要件(規則)
雇用管理に限った改正確認した5資料に記載なし今後の政令・規則・ガイドラインで示されるかは不明
このページが扱わないこと労働関係の法令(保存期間や届出の定め)と、委員会の既存ガイドラインの雇用管理に関する部分は、改正の資料と別に確認が必要で、このページでは確かめていません。
この記事の位置づけここに書いたのは、個人情報保護委員会が公表した資料の整理であり、個別の事案についての法的な助言ではありません。自社の取扱いが規律の対象に当たるかの最終的な判断は、顧問弁護士または個人情報保護委員会にご確認ください。

よくある質問

従業員の個人情報だけに適用される改正はありますか。

委員会の改正法の概要、政令・規則の全体像、今後の取組方針、基本的な考え方①②の本文では、従業員・応募者・退職者の情報だけを対象にした項目は確認できませんでした。罰則では従業者・退職者が条文に出ます。今後の政令・規則で示される可能性は否定できません。

応募者の履歴書も個人情報として扱う対象ですか。

このサイトは個別の該当性判断をしません。改正の資料には応募者を区別した記載がないため、応募者の情報についても、データベース化して取り扱う場合の規律を、取り扱う情報の種類と行為ごとに各解説ページで確かめてください。

退職者が名簿を持ち出した場合、会社も罰せられますか。

行為をした個人が罰則の対象です。法人は、業務に関して従業者が違反行為をしたとき両罰規定の対象になりえます。条文と法定刑は2027年1月施行の罰則のページにまとめています。個別の事案への当てはめは、顧問弁護士に確認してください。

出典