リスクに適切に対応した規律 / 更新 2026-10-09

利用停止等請求の例外事由の対照表(顔特徴データ等・16歳未満)

出典: 令和8年改正法の本文(令和8年法律第56号)と個人情報保護委員会の新旧対照表。2026-10-09に本文を確認。

ノートパソコンで資料を作成する手元

改正法は、本人が事業者に「利用をやめてほしい」「データを消してほしい」と求める請求(利用停止等請求)について、法律違反がなくても請求できる場合を2つ新設します。顔特徴データ等と、16歳未満の本人のデータです。どちらも請求を断れる場合(例外事由)が条文に列挙されています。この記事は、その2つの例外事由を号ごとに並べ、どこが同じでどこが違うか、どの号が規則・政令の決定待ちかを一覧にしました。

1. 利用停止等請求は3つの入口に分かれる

「利用停止等」とは、利用の停止または消去のことです。改正後の法第35条には、請求の入口が3つあります。

利用停止等請求の3つの入口(法第35条)
入口請求できる場合今回の改正
従来型(第1項・第3項)保有個人データ(事業者が開示や削除などに応じる権限を持つ個人データ)が、法律の規定に違反して取り扱われている、または第三者に提供されているとき違反の対象に、統計作成等の特例(法第30条の2)、受託者の義務(法第30条の3)、個人関連情報の統計作成等の特例(法第31条の3)の規定が加わる
顔特徴データ等(第7項)本人が識別される特定生体個人情報(顔特徴データ等)が取り扱われているとき。違反の有無は問わない新設。例外事由は第1号〜第10号
16歳未満(第9項)16歳未満の本人が識別される保有個人データが取り扱われているとき。違反の有無は問わない新設。例外事由は第1号〜第12号

従来型は、法律違反があって初めて請求できました。第7項と第9項は、例外事由に当たらない限り、違反がなくても請求できる点が大きく違います。顔特徴データ等の定義は顔特徴データ等の解説に、16歳未満の規律の全体はこどもの個人情報の解説にあります。

2. 例外事由を号ごとに並べた対照表

請求を受けても応じなくてよい場合(例外事由)を、内容が同じものを同じ行に置いて並べました。右の2列の番号は、それぞれの項の号数です。

顔特徴データ等(第35条第7項)と16歳未満(第35条第9項)の例外事由の対照
例外事由の内容顔特徴データ等(第7項)16歳未満(第9項)
同意を得て取得または作成した第1号: あらかじめ本人の同意を得て、顔特徴データ等の元になる識別符号を作成した
第2号: あらかじめ本人の同意を得て取得した
第1号: あらかじめ法定代理人の同意を得て取得した
法令に基づいて取り扱う第3号第2号
人の生命・身体・財産の保護に必要第4号第3号
公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進に特に必要第5号第4号
国の機関・地方公共団体などの法令上の事務への協力に必要第6号第5号
学術研究機関等が学術研究目的で取り扱う必要がある第7号第6号
学術研究機関等と共同研究をする事業者が、その機関から取得した第8号第7号
契約の履行に必要やむを得ない場合など、取得の状況からみて権利利益を害しないことが明らか
(委員会規則で定める場合)
第9号(本人の意思に反しないため権利利益を害しないことが明らか)第8号(16歳未満の本人の権利利益を害しないことが明らか)
取得の時点で、法定代理人・国の機関・地方公共団体・学術研究機関等などにより公開されていた該当する号なし第9号(公開した者の範囲は委員会規則で定める)
法定代理人が本人の営業を許可し、その営業に関して取得した該当する号なし第10号
本人が、16歳以上だと信じさせるために詐術を用いていた該当する号なし第11号
上記に準ずるもの(政令で定める)第10号第12号

読み取れる違いは3点です。

  • 同意の例外は、顔特徴データ等が「作成」と「取得」の2つの場面に分かれ、16歳未満は「法定代理人の同意で取得」の1つです。
  • 公開されていたデータ・営業許可・詐術の3つは、16歳未満だけにある例外です。
  • 最後の「政令で定める準ずるもの」は、どちらにも置かれていますが、号の番号が異なります。

3. 請求を受けたときの対応の定め

請求に理由があると分かったときは、遅滞なく利用停止等または第三者への提供の停止を行います。多額の費用がかかるなどで困難な場合は、本人の権利利益を守るための代わりの措置をとれば、この限りではありません。この構造は、顔特徴データ等(第8項)と16歳未満(第10項)で同じです。16歳未満の場合の「代わりの措置」は、16歳未満の本人の権利利益を保護するために必要なものとされています。

4. 規則・政令の決定を待っている号

まだ決まっていないこと次の号は、条文の内容を委員会規則または政令に委ねており、2026-10-09に確認した委員会の資料では、中身が決定したとは示されていません。
① 契約の履行に必要やむを得ない場合など、権利利益を害しないことが明らかな場合: 顔特徴データ等の第9号、16歳未満の第8号。委員会規則で定めます。
② 公開した者の範囲: 16歳未満の第9号。法定代理人・国の機関などに加える者を委員会規則で定めます。
③ 準ずる例外事由: 顔特徴データ等の第10号、16歳未満の第12号。政令で定めます。
これらが決まると、上の表の例外が増えたり、中身が具体的になったりします。決定の追跡はまだ決まっていないこと一覧で行っています。

5. 自社が関係するかを考える順序

  1. 自社が顔特徴データ等、または16歳未満の本人の保有個人データを取り扱っているかを洗い出す。
  2. 取得の場面ごとに、同意を得ているか、得ているのが本人か法定代理人かを確かめる。
  3. データの利用目的が、上の表の例外事由(法令、生命・身体・財産の保護、学術研究など)のどれに当たりうるかを確かめる。
  4. 請求を受けたときの受付窓口と、停止・消去に対応できる仕組みがあるかを確かめる。
  5. 規則・政令で決まる号が示された時点で、洗い出した結果をもう一度見直す。
この記事の位置づけここに書いたのは、改正法本文と新旧対照表の整理であり、個別の事案についての法的な助言ではありません。表は読みやすさのために文言を縮めています。条文の文言の正確な内容は、出典の改正法本文でご確認ください。自社の取扱いが例外事由に当たるかの最終的な判断は、顧問弁護士または個人情報保護委員会にご確認ください。

よくある質問

法律違反がなくても利用停止を求められるのは、どのデータですか

改正法で新設される2つです。顔特徴データ等(特定生体個人情報)と、16歳未満の本人が識別される保有個人データです。それ以外の保有個人データは、従来どおり法律違反がある場合の請求になります。

本人の同意を得ていれば、請求を断れますか

顔特徴データ等は、あらかじめ本人の同意を得て作成または取得した場合が例外事由に挙げられています(第7項第1号・第2号)。16歳未満は、あらかじめ法定代理人の同意を得て取得した場合が例外事由です(第9項第1号)。

16歳未満の顔特徴データ等には、どちらの項が関係しますか

両方の規律が関係しえます。同意に関する第7項の号は、16歳未満の本人については法定代理人の同意に読み替えられます(読替表の一覧)。

規則や政令はいつ決まりますか

2026-10-09に確認した時点では、決定の時期は示されていません。委員会は政令・規則の基本的な考え方を順次公表している段階で、進み具合は政令・規則・ガイドラインの整備の進め方で追えます。

出典