最初に施行される規定 / 更新 2026-09-05

2027年1月17日施行の罰則とは

出典: 改正法の本文(令和8年法律第56号)およびe-Gov法令検索の現行条文。2026-09-05に確認。

令和8年改正で最初に動くのは罰則です。課徴金や顔特徴データ等の規律は政令待ちで2028年7月16日までかかりますが、罰則関係は2027年1月17日に施行されます。日付が法律で確定している唯一の期限であり、準備期間はここから逆算します。何が引き上げられ、何が新設されるのかを、法律の条文から整理します。

このページの範囲罰則の適用要件をどう解釈するか(どこまでが「不正な利益を図る目的」に当たるか等)は、法律事務所の解説が扱う領域です。このページは「いつから・誰に・何が対象になるか」に絞ります。個別の事案が罰則に当たるかの判断はしません。

1. なぜ罰則だけ先に施行されるのか

改正法の附則第一条は、原則として「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日」から施行すると定めた上で、第三号で「公布の日から起算して6か月を経過した日」=2027年1月17日から施行する規定を個別に列挙しています。罰則に関する条文はすべてこの第三号に含まれています。

課徴金・顔特徴データ等・委託先規律などの本体部分は、対象範囲や手続を政令・委員会規則で定めなければ運用できません。一方、罰則の引き上げと新設は条文だけで完結するため、先に動かせるという構造です。あわせて公示送達のデジタル化(法第163条第2項・第3項)も同日施行されます。

2. 引き上げられる法定刑

既存の3つの罰則が引き上げられます。条文番号は改正により繰り上がりますが、ここでは分かりやすさのため現行の条文番号で示します。

(1) 個人情報データベース等の不正提供・盗用(現行 法第179条 → 第178条)

個人情報取扱事業者(法人の場合はその役員・代表者・管理人)やその従業者、またはこれらであった者が、業務に関して取り扱った個人情報データベース等を不正な利益を図る目的で提供または盗用した場合の罰則です。

現行
1年以下の拘禁刑 または 50万円以下の罰金
改正後
2年以下の拘禁刑 または 100万円以下の罰金
目的の追加
「自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的」に加えて、「本人その他の者に損害を加える目的」が対象になります

従業者や退職者による持ち出しが典型例として想定される条文です。「利益を図る目的」がなくても「損害を加える目的」があれば対象になる点が、実務上の変更点です。

(2) 保有個人情報の不正提供・盗用(現行 法第180条 → 第179条)

行政機関等の職員等が、業務に関して知り得た保有個人情報を不正な利益を図る目的で提供・盗用した場合の罰則です。(1)と同じく、目的に「損害を加える目的」が追加され、法定刑が2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金へ引き上げられます。

(3) 個人情報ファイルの提供(法第176条)

行政機関等の職員等が、正当な理由なく個人の秘密に属する事項が記録された個人情報ファイルを提供した場合の罰則です。

現行
2年以下の拘禁刑 または 100万円以下の罰金
改正後
3年以下の拘禁刑 または 150万円以下の罰金

3. 新設される2つの罰則

(1) 不正取得罪(新設 法第180条)

これまで罰則の対象は「持っている情報を不正に提供・盗用すること」でしたが、取得する行為そのものが新たに罰則の対象になります。条文が挙げる手段は次のとおりです。

  • 人を欺く、人に暴行を加える、人を脅迫する行為
  • 財物の窃取・損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受
  • 不正アクセス行為(不正アクセス禁止法第2条第4項に規定するもの)
  • その他、個人情報を保有する者の管理を害する行為

これらの手段により、不正な利益を図る目的または本人等に損害を加える目的で個人情報を取得したときは、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金となります。第2項で、刑法その他の罰則の適用を妨げないことが明記されています。

(2) 措置命令違反(新設 法第181条)

措置命令に違反した場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金となります。

読み替えの経過措置があります「措置命令」は本体部分の施行で導入される用語のため、2027年1月17日から本体施行日の前日までの間は、この条文の「措置命令」を「法第148条第2項又は第3項の規定による命令」と読み替えて適用します(改正法の附則第三条)。つまりこの期間は、現行の命令規定に違反した場合が対象です。

4. いつから

2027年1月17日です。公布日(2026年7月17日)から起算して6か月を経過した日で、政令を待たずに日付が確定している唯一の期限です。本体部分(課徴金・顔特徴データ等・委託先規律など)は「公布から2年を超えない範囲内で政令が定める日」で、上限は2028年7月16日ですが実際の日付は未定です。決定タイムラインで追記していきます。

5. 自社で確認しておく順序

個別の判断はできませんが、確認の順序は示せます。罰則は体制を作り直す話ではなく、すでにあるはずの管理が機能しているかの確認が中心になります。

  1. 従業者・退職者が個人情報データベース等を持ち出せる状態になっていないかを確認する。引き上げの対象は事業者そのものではなく、行為をした個人だが、持ち出しが起きれば事業者の管理責任も問われる。
  2. 退職時のアクセス権限の停止、貸与端末の回収、持ち出しの検知手段があるかを点検する。「損害を加える目的」が加わったことで、金銭目的でない持ち出しも対象になりうる。
  3. 委託先・再委託先で同じ管理ができているかを確認する(委託先の個人データ取扱いの規律も本体施行で変わる)。
  4. 不正アクセスによる情報取得が新たに罰則の対象になるため、自社が被害を受けた場合の記録・通報の手順を確認する。あわせて漏えい等報告のフローも点検する。
  5. 個人情報保護委員会からの命令・報告徴収に応答する窓口が決まっているかを確認する。措置命令違反が罰則の対象になる。
この記事の位置づけここに書いたのは、改正法の条文と現行条文の突き合わせであり、個別の事案についての法的な助言ではありません。ある行為が罰則に当たるかどうかの判断は、顧問弁護士にご確認ください。罰則の適用要件の詳しい解釈は、法律事務所各社が解説を公開しています。

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