士業事務所の入口 / 更新 2026-10-12

士業事務所の依頼者情報と令和8年改正(守秘義務・委託先・漏えい等報告)

出典: 各士業法の条文(e-Gov法令検索)、個人情報保護委員会のQ&A・改正法の概要・政令規則の整備資料。2026-10-12に本文を確認し、士業法の条文は2026-10-19に再確認。

ノートに書き込む手と、向かいに座る人

弁護士・税理士・社会保険労務士などの士業事務所向けに、依頼者や顧客企業の情報の扱いが令和8年改正のどこに関わるかを整理しました。士業には各士業法の守秘義務がありますが、個人情報保護法の規律は別に確認が必要です。確認できた場面と、事務所ごとに判断が分かれて確定できないことを分けて書きます。

1. 確認できたこと: 守秘義務と個人情報保護法は別の規律、改正は士業専用ではない

各士業法は、業務上知り得た秘密を守る義務を定めています。e-Govで確認した条文は次のとおりです。

  • 弁護士法第23条: 弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う(法律に別段の定めがある場合を除く)。
  • 税理士法第38条: 税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後も同様。
  • 社会保険労務士法第21条: 開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員は、正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。社員でなくなつた後も同様。
  • 司法書士法第24条: 司法書士又は司法書士であつた者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱つた事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない。
  • 行政書士法第12条: 行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も同様。
士業ごとの守秘義務の根拠条文の並べ方(e-Govで2026-10-19に確認した条文の文言)
士業法条義務の内容例外の書き方資格を失った後
弁護士法第23条秘密を保持する権利を有し、義務を負う法律に別段の定めがある場合を除く弁護士であつた者も対象
税理士法第38条他に洩らし、又は窃用してはならない正当な理由がなくて税理士でなくなつた後も同様
社会保険労務士法第21条他に漏らし、又は盗用してはならない正当な理由がなくて社員でなくなつた後も同様
司法書士法第24条他に漏らしてはならない正当な事由がある場合でなければ司法書士であつた者も対象
行政書士法第12条漏らしてはならない正当な理由がなく行政書士でなくなつた後も同様

表のとおり、守秘義務は「誰が」「どの範囲の情報を」「どの例外で」守るかが士業法ごとに違い、いずれも個人情報保護法とは別の法律に置かれています。個人情報保護法の改正項目は、情報の種類や行為(罰則、委託、漏えい等報告など)で書かれており、士業法の条文を改めるものではありません。行政書士法には第12条違反に対する罰則(第22条: 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、告訴がなければ公訴を提起できない)が置かれています。他の士業法の罰則は、このページでは確認していないため載せていません。なお、これらの条文の「正当な理由」にどの場合が当たるかは、個別の事案ごとの判断で、このサイトでは示しません。

これらは士業法の規律です。一方、個人情報保護委員会のQ&A(A1-50・A1-54)は、個人情報データベース等(検索できる名簿など)を事業の用に供していれば、営利・非営利を問わず、取り扱う件数が少なくても個人情報取扱事業者に該当しうるとしています。したがって、事務所が依頼者名簿や顧客台帳を検索できる形で持っていれば、個人情報保護法の規律も確認する対象になりえます。個別の事務所が該当するかは、このサイトでは判断しません。

令和8年改正については、委員会の改正法の概要と政令・規則の整備資料のうち、このサイトが確認した範囲では、士業だけを対象にした項目は見当たりません。改正項目は、取り扱う情報の種類や行為(罰則、委託、漏えい等報告、課徴金等)で書かれています。このサイトが確認した資料に、士業の守秘義務と改正との関係を直接説明した記載はありません。

2. 事務所の場面と、関係しうる改正項目

士業事務所の場面と関係しうる改正項目(確認日 2026-10-12)
場面関係しうる改正項目状態解説ページ
顧客企業から名簿・給与データ・帳簿を預かって処理する委託先自身への義務の明文化(法第30条の3)と、指示どおりに機械的に処理する委託先の義務免除(法第58条の2)。事務所が委託先に当たるかは業務内容による契約事項は規則待ち委託先の個人データ取扱い、委託先契約で定める事項の3論点
事務所のメール誤送信・書類の誤送付・端末の紛失漏えい等報告・本人通知の見直し規則待ち漏えい等報告・通知、6論点
職員・退職者による依頼者名簿の持ち出し個人情報データベース等の不正提供等の罪。罰則関係は2027年1月17日に施行施行日は確定2027年1月施行の罰則
他の専門家や外部のシステム事業者に業務や保管を任せる委託先への監督(現行法第25条)と、受託側の義務の明文化。外部サービスとの契約の確認が先に必要契約事項は規則待ち委託先への確認質問リスト
事務所の職員の個人情報(雇用・給与)士業に限らず事業者として共通。特有の項目は確認した資料になし―従業員・応募者・退職者の情報と改正

弁護士会からの照会(弁護士法第23条の2)に応じる場合について、委員会のQ&A(A7-16)は、「法令に基づく場合」(法第27条第1項第1号)に該当するため、照会に応じて提供する際に本人の同意を得る必要はないとしています。訴訟代理人の弁護士・裁判所に相手方の個人データを含む証拠等を提出する場合は、Q&A(A13-3)が、法第27条第1項第2号に該当し得るため記録義務は適用されないものと考えられるとしています。これらは現行法に関するQ&Aで、令和8年改正で変わるかは確認できていません。

2-2. 預かる情報の種類別の棚卸し

場面ではなく「何の情報を預かっているか」から引く表です。どの情報を実際に預かっているかは事務所ごとに違うため、自事務所の情報に印を付けて使ってください。

預かる情報の種類と、関係しうる改正項目(確認日 2026-10-12)
情報の種類誰の情報か関係しうる改正項目事務所が確かめること
依頼者名簿・顧客台帳依頼者本人(個人の場合)不正提供等の罪(2027年1月17日施行)、漏えい等報告・本人通知の見直し(規則待ち)検索できる形で持っているか、職員・退職者の権限を止める手順があるか
顧問先の従業員データ・給与データ顧問先企業の従業員委託先自身への義務の明文化(法第30条の3)と義務免除(法第58条の2)。契約事項は規則待ち顧客企業との契約で、取扱いの方法を誰が決めると書かれているか
案件ファイル(相手方・関係者の情報を含む)依頼者のほか、相手方や関係者漏えい等報告・本人通知の見直し(規則待ち)。弁護士会照会・証拠提出の扱いは現行法のQ&A(A7-16・A13-3)保存場所(共有フォルダ・クラウド・紙の綴り)と、誤送付を防ぐ手順
外部サービスに預けているデータ上の各情報の本人委託先への監督(現行法第25条)、受託側の義務の明文化(契約事項は規則待ち)契約書・利用規約の確認。質問は委託先への確認質問リストを使う
事務所職員の雇用・給与の情報事務所の職員・応募者・退職者士業に限らず事業者として共通。特有の項目は確認した資料になし従業員・応募者・退職者の情報と改正のページで確認

表は関係しうる項目の整理で、該当性の判定ではありません。要配慮個人情報にあたる情報を預かっているかなど、情報の中身による違いは、このページでは確かめていません。

3. 準備として確認できること

個別の判断はできませんが、事務所が最初に確かめる点は示せます。

  1. 依頼者名簿、顧問先の従業員データ、案件ファイルが、どの場所(事務所内の共有フォルダ、クラウド、紙の綴り)にあるかを一覧にする。
  2. 職員や退職者のアクセス権限を止める手順があるかを確認する。罰則が施行される2027年1月17日より前に確かめておく項目です。
  3. 会計・給与計算・書類管理などを外部サービスに任せているなら、契約書・利用規約を探す。確認の質問は委託先への確認質問リストにまとめています。
  4. 顧客企業から個人データの処理を受けている業務について、顧客企業との契約で、取扱いの方法を誰が決めると書かれているかを確認する。免除規定に関係する点です。
  5. 職員向けの注意喚起の文面を社内周知の要点で確かめる。

4. 決まっていることと未確定のこと

士業事務所の情報に関係しうる改正項目の状態
項目決まっていること未確定のこと
守秘義務各士業法が定める(弁護士法第23条・税理士法第38条・社会保険労務士法第21条・司法書士法第24条・行政書士法第12条)令和8年改正との関係を直接述べた資料は確認できていない
事務所への適用個人情報データベース等を事業の用に供していれば個人情報取扱事業者に該当しうる(委員会Q&A)個別の事務所が該当するか(このサイトでは判断しない)
罰則(持ち出し)2027年1月17日に施行個別の行為が当たるかは事案ごとの判断
委託先の規律委託先への義務の明文化と免除の枠組み(改正法)免除の前提となる契約事項(規則)、士業の業務が委託に当たるか
漏えい等報告改正法に規定。具体的な内容は委任政令・規則の内容と施行日
士業に限った改正確認した資料に記載なし今後の政令・規則・ガイドラインで示されるかは不明
このページが扱わないこと各士業法の守秘義務が個人情報保護法の規律とどう重なるか、弁護士・税理士などの職業倫理規程、各士業会の指針は、このページでは確かめていません。行政書士・司法書士など、上の3士業以外の守秘義務の条文も、このページでは取り上げていません。
この記事の位置づけここに書いたのは、法令の条文と個人情報保護委員会が公表した資料の整理であり、個別の事案についての法的な助言ではありません。自事務所が規律の対象に当たるかの最終的な判断は、所属する士業会、顧問弁護士または個人情報保護委員会にご確認ください。

よくある質問

士業は守秘義務があるのに、個人情報保護法の改正も確認する必要がありますか。

守秘義務は各士業法(弁護士法第23条、税理士法第38条、社会保険労務士法第21条など)が定める別の規律で、個人情報保護法の規律をなくすものではありません。個人情報データベース等を事業の用に供していれば個人情報取扱事業者に該当しうるため、両方を確認する必要があります。個別の事務所への当てはめは、このサイトでは判断しません。

令和8年改正に、士業だけを対象にした項目はありますか。

確認した委員会の資料では、士業だけを対象にした項目は見当たりませんでした。改正項目は取り扱う情報の種類や行為で書かれています。今後の政令・規則で示される可能性は否定できません。

顧客企業から預かった名簿や給与データの扱いは、委託先の規律に当たりますか。

委託を受けて個人データを取り扱う場合は、委託先自身に義務が明文化されます(法第30条の3)。ただし、士業の業務が法律上の委託に当たるか、事務所が自ら取扱いの方法を決める立場かは、業務の内容ごとの判断になり、このサイトでは判断しません。

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