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現行制度の整理 / 更新 2026-10-26

保有個人データの開示請求の手数料|実費の範囲と周知

出典: e-Gov法令検索(個人情報保護法 第32条・第33条・第38条)、個人情報保護委員会「ガイドライン(通則編)」「ガイドラインに関するQ&A」、令和8年改正法の本文。2026-10-26に原文を確認。

本人から保有個人データの開示を請求されたとき、手数料を取れるのか、いくらまでなら妥当なのかを、法第38条の条文とガイドライン、委員会Q&Aの順に整理しました。令和8年改正でも第38条の文言は変わらない点もあわせて示します。

1. 結論:取れるが、実費を勘案した合理的な額に限る

  1. 取れる請求は限られる(法第38条第1項): 手数料を徴収できるのは、利用目的の通知を求められたとき(第32条第2項)と、開示の請求を受けたとき(第33条第1項)です。取ることは義務ではなく、「徴収することができる」と定められています。
  2. 額は実費が基準(法第38条第2項): 手数料を徴収する場合は、実費を勘案して合理的であると認められる範囲内で額を定めなければなりません。
  3. 額を定めたら周知(法第32条第1項第3号): 請求に応じる手続とあわせて、手数料の額を本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む)に置きます。

つまり、手数料は開示の実施にかかる費用の範囲で、あらかじめ額を決めて公表しておく仕組みです。開示に応じる事業者が利益を得るための料金ではありません。

2. 手数料を徴収できる請求の種類

ガイドライン(通則編)3-8-8は、手数料の対象を次のように示しています。訂正等や利用停止等は、第38条が挙げる対象に入っていません。

請求の種類と手数料(法第38条・ガイドライン通則編 3-8-8)
請求の種類根拠の条文手数料の徴収
保有個人データの利用目的の通知を求める法第32条第2項徴収できる(法第38条第1項)
保有個人データの開示を請求する法第33条第1項徴収できる(同上)
第三者提供記録の開示を請求する法第33条第5項(第1項を準用)徴収できる(ガイドライン3-8-8)
保有個人データの訂正・追加・削除を請求する法第34条第38条の対象に挙がっていない
利用停止・消去、第三者提供の停止を請求する法第35条第38条の対象に挙がっていない

3. 額の決め方:実費を勘案して合理的な範囲

条文は、額を「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内」で定めることを求めています。具体的な金額の基準は条文にもガイドラインにもありません。委員会のQ&Aは次のように答えています(確認日 2026-10-26)。

手数料の額に関する委員会Q&Aの答え
問いQ&Aの答え
いくらにすべきか(Q9-27)実費を予測して平均的単価を算出して定めることが望ましい。業種や保有個人データの種類を勘案する必要があるため、統一的な相場を示すことは困難。郵便で開示の請求に応じる場合は、配達証明付書留料金を勘案するなど適切な金額を検討する。
手数料で利潤を得られるか(Q9-29)開示の実施に関し手数料を徴収することは認められているが、額は実費を勘案して合理的であると認められる範囲内で定めなければならない(法第38条第2項)。
開示しなかった場合に返すか(Q9-28)法第38条は現に開示を行ったか否かにより特に区別していないため、必ずしも返還する義務は生じない。

実費にどの費目を入れるかは、事業者ごとの開示の方法(郵送、電磁的記録の提供など)で変わります。法第33条第1項は、開示を電磁的記録の提供による方法その他の委員会規則で定める方法で請求できると定めているため、自社が受け付ける方法ごとに、実際にかかる費用を見積もったうえで額を決めることになります。

4. 定めた額の周知:本人の知り得る状態に置く

手数料の額を定めたときは、その額を含めて、請求に応じる手続を本人の知り得る状態に置かなければなりません(法第32条第1項第3号)。ガイドライン(通則編)が挙げる「本人の知り得る状態」の事例は次のとおりです(確認日 2026-10-26)。

  • 問合せ窓口を設け、問合せがあれば口頭または文書で回答できるよう体制を構築しておく場合
  • 店舗にパンフレットを備え置く場合
  • 電子商取引で、商品を紹介するホームページに問合せ先のメールアドレスを表示する場合

ガイドラインは、普段から問合せ対応が多い事業者がホームページへ継続的に掲載する方法は、この趣旨に合致するとしています。なお、開示等の請求を受け付ける方法を定めない場合は、自由な申請を認めることになるとも注意しています。受付方法の定め(法第37条)と手数料の額は、同じ場所にまとめて載せると確認しやすくなります。

5. 令和8年改正での扱い

令和8年改正法の本文(個人情報保護委員会が公表したPDF)には、第38条そのものを改める条項がありません(第37条を改める文の次は第39条を改める文で、第38条は他の規定の中で引用されるだけです)。第38条に関わる改正は次の2点です(確認日 2026-10-26)。

  • 第32条第1項第3号の文言の整理です。手数料に関する部分は、「第三十八条第二項」を「第三十八条第一項」に、「の額を定めたとき」を「を徴収する場合」に改める、とされています。
  • 新設される第21条の2(特定生体個人情報の取扱いに際しての通知等)の第5号に、開示等の請求等に応じる手続として、第38条第1項の規定により手数料を徴収する場合はその手数料の額を含む、と書かれています。特定生体個人情報は特定生体個人情報とは・顔特徴データとはにまとめています。

施行日は、公布の日(2026年7月17日)から起算して2年を超えない範囲で政令で定める日とされ、本ページの確認日時点で日付は未確定です。それまでは現行の条文が適用されます。

6. 自社で確かめる順序

  1. 手数料を取るかを決める。取らない場合は額を定める必要はありません(条文は「徴収することができる」)。
  2. 取る場合は、受け付ける開示の方法ごとに、実際にかかる費用を見積もる。
  3. 見積もった実費を超えない額に決め、算出の根拠を社内に残す。
  4. 額を、開示請求の受付方法とあわせて、ホームページや窓口など本人の知り得る状態に置く。
  5. 開示しない決定をした場合の扱い(返金するか)も、あらかじめ定めておく。Q&Aは返還義務が必ずしも生じないとしていますが、返すことを禁じてはいません。

7. よくある質問

Q1. 開示請求の手数料はいくらにすべきですか。

相場や上限額は定められていません。実費を予測して平均的単価を算出して定めることが望ましいとされ、郵送なら配達証明付書留料金を勘案する例が示されています。

Q2. 開示しなかった場合でも、徴収した手数料は返す必要がありますか。

Q&A(A9-28)は、必ずしも返還する義務は生じないとしています。

Q3. 訂正や利用停止の請求でも手数料を徴収できますか。

法第38条第1項が認めるのは、利用目的の通知の求めと開示の請求です。ガイドラインは第三者提供記録の開示の請求も含めています。訂正等と利用停止等は、第38条の対象に挙がっていません。

この記事の位置づけここに書いたのは、法令の原文と個人情報保護委員会の資料の整理であり、個別の事案についての法的な助言ではありません。自社の手数料の額が実費の範囲に収まるかの最終的な判断は、顧問弁護士または個人情報保護委員会にご確認ください。

開示以外の請求への対応は、利用停止等請求の例外事由の対照表とこどもの個人情報のページにあります。

出典