令和8年改正は、民間の事業者向けの規律が中心です。ただし委員会の「改正法の概要」には、国や自治体などの行政機関等についても「同様の改正を行う」と書かれた項目があります。このページは、その項目だけを拾って並べたものです。
1. 「行政機関等」とは
個人情報保護法で「行政機関等」とは、国の行政機関、地方公共団体の機関(議会を除く)、独立行政法人等、地方独立行政法人をいいます(法第2条第11項。独立行政法人等と地方独立行政法人には、条文で除かれるものがあります)。民間の事業者は「個人情報取扱事業者」と呼ばれ、規律の置き場所が分かれています。
改正法の概要は、民間向けの改正内容の説明のあとに「公的部門に対する規律、番号法、医療分野の匿名加工医療情報・仮名加工医療情報に関する法律においても、所要の措置(16歳未満の者の個人情報等の取扱い等)を講ずる」と書いています。番号法と医療情報法の側は改正法が改正する個人情報保護法以外の法律で整理しています。
2. 行政機関等にも同様の改正が書かれている項目
概要の本文で「行政機関等についても同様」と読める箇所は、次の6つです。右の列は、民間の事業者向けの項目を説明しているページです。
| 項目 | 行政機関等について概要に書かれていること | 民間向けの解説 |
|---|---|---|
| 統計作成等 | 行政機関等が持つ保有個人情報について、利用目的以外の目的での提供に関する「統計の作成」の例外の対象を、統計情報等の作成に広げる。 | 統計作成等の特例とは |
| 16歳未満の者 | 法定代理人の関与と責務の規定について、行政機関等についても同様の改正を行う。 | こどもの個人情報(16歳未満) |
| 委託先の規律 | 委託先が行政機関等である場合についても、同様の規律の整備を行う。 | 委託先の義務と免除 |
| 漏えい等の本人通知 | 本人の権利利益の保護に欠けるおそれが少ない場合に通知義務を緩和し、代替措置による対応を認める点について、行政機関等についても同様の改正を行う。 | 本人通知が不要になる場合 |
| 違法な第三者提供の報告 | 違法な個人データの第三者提供を報告対象事態にする点について、行政機関等についても同様の改正を行う。 | 漏えい等報告・本人通知 |
| 個人関連情報等の不適正利用・不正取得 | 特定の個人に対する働きかけが可能となる個人関連情報等と、同様の記述等を含む仮名加工情報・匿名加工情報について、不適正利用と不正取得の禁止を導入する。さらに、行政機関等についても同様の改正を行う。 | 連絡可能個人関連情報とは |
表の「行政機関等について概要に書かれていること」は、概要の文を読みやすく言い換えたものです。条番号や細かい要件は、概要には書かれていません。
3. 罰則で行政機関等の職員等に関わる部分
概要の「悪質事案に対応するための刑事罰」の節は、個人情報データベース等の不正提供等罪と、保有個人情報の不正提供等罪(現行の第179条・第180条)について、「不正な利益を図る目的」の提供に加えて「損害を加える目的」での提供も対象に追加する、と書いています。このうち保有個人情報の不正提供等罪は、行政機関等の職員等が対象になる罪です。法定刑の見直しの表では、行政機関等の職員等に関わる罪として、第176条(個人の秘密に属する事項が記録された個人情報ファイルの提供)が「2年以下の拘禁刑・100万円以下の罰金」から「3年以下・150万円以下」に、第180条(業務で知り得た保有個人情報の不正な利益を図る目的での提供・盗用)が「1年以下・50万円以下」から「2年以下・100万円以下」に改められています。罰則の全体の整理は2027年1月施行の罰則のページにあります。
4. まだ決まっていないこと
5. 民間事業者が自社に関係するかを確かめる場面
ここまでの6項目は、国や自治体などの行政機関等そのものの規律です。民間の事業者が気にする場面は、多くの場合「行政から仕事を任されている」ときです。次の表は、場面ごとに現行の条文が何を定めているかを、e-Gov法令検索で確認した範囲で並べたものです。令和8年改正でこれらの条文が変わるかは、委員会の概要では確認できていません。
| 場面 | 現行の条文が定めていること | 条文 |
|---|---|---|
| 国や自治体から個人情報の取扱いを含む業務を受託している | 受託した業務における個人情報の取扱いについて、行政機関の長等に課される保有個人情報の安全管理措置の規定が準用されます。 | 法第66条第2項第1号 |
| 公の施設(図書館・体育館など)の指定管理者になっている | 公の施設の管理の業務における個人情報の取扱いについて、同じ安全管理措置の規定が準用されます。 | 法第66条第2項第2号 |
| 受託事業者や指定管理者から、さらに業務を再委託されている | 二以上の段階にわたる再委託を受けた者も、再委託を受けた業務について準用の対象です。 | 法第66条第2項第5号 |
| 受託業務に従事する担当者(従業員) | 受託業務に従事している者・従事していた者は、業務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせたり、不当な目的に利用したりしてはなりません。 | 法第67条 |
| 担当者が、受託業務で扱う個人情報ファイルや保有個人情報を不正に持ち出す・提供する | 個人の秘密に属する事項が記録された個人情報ファイルを正当な理由なく提供したときは2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、業務で知り得た保有個人情報を不正な利益を図る目的で提供または盗用したときは1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定められています。 | 法第176条・法第180条 |
一方で、次の点は条文から読み取れる範囲で「及ばない」と整理できます。第一に、法第2条第11項の「行政機関等」には、民間の受託者や指定管理者そのものは列挙されていません。第二に、保有個人情報の開示請求権(法第76条第1項)は、行政機関の長等に対する請求として定められています。受託者に準用されると法第66条第2項が定めているのは、安全管理措置の規定(同条第1項)です。受託契約の仕様書や協定に、さらに具体的な定めがある場合は、その内容に従う必要があります。
自社が実際にこの表のどの場面に当たるか、準用される安全管理措置の具体的な水準、第58条第1項各号・第2項各号に掲げる者が行う業務のうち政令で定めるものに当たるかは、受託の内容や政令の定めで変わるため、このサイトでは判断できません。指定管理者の場面の読み方は業種別の入口 70番(公共施設の指定管理者・民間受託事業者)、民間事業者として委託先に求められる新しい義務は委託先における個人データ等の適正な取扱いに整理しています。委託元の担当部署または顧問弁護士にご確認ください。
よくある質問
令和8年改正は、国や自治体にも及びますか。
委員会の改正法の概要は、統計作成等、16歳未満の者の規律、委託先の規律、漏えい等の本人通知、違法な第三者提供の報告、個人関連情報等の不適正利用・不正取得の禁止の6つについて、行政機関等にも同様の改正を行うと書いています。罰則も、行政機関等の職員等に関する不正提供等の罪が見直しの対象に含まれます。
民間企業が国や自治体から業務を受託している場合は、どう関係しますか。
概要は、委託先の規律について、委託先が行政機関等である場合にも同様の規律を整える、と書いています。これは委託先が行政機関等のときの話です。国や自治体から委託を受ける民間事業者については、現行の法第66条第2項が、受託した業務における個人情報の取扱いに安全管理措置の規定を準用すると定めています(5節)。令和8年改正でこの部分が変わるかは、確認できた資料に書かれていません。個別の契約上の扱いは、委託契約の相手方または顧問弁護士にご確認ください。
指定管理者として公共施設を運営している民間事業者は、行政機関等の扱いになりますか。
法第2条第11項が列挙する「行政機関等」に、指定管理者そのものは含まれていません。ただし法第66条第2項第2号は、指定管理者が公の施設の管理の業務を行う場合の個人情報の取扱いについて、行政機関の長等の安全管理措置の規定を準用すると定めています。準用されるのは安全管理措置の規定で、開示請求への対応などの規定ではありません。個別の協定や契約の定めは、このサイトでは判断できません。
行政機関等に関する規則や施行日は決まっていますか。
決まっていません。概要は、全体の施行期日を原則として公布の日から起算して2年を超えない範囲内としています。行政機関等に関する政令・規則の内容は、確認できた資料には書かれていません。
出典
- S-66個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律について」(PDF・2026年7月) 第1〜第4(確認日 2026-10-11)
- S-66e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」 第2条第11項(確認日 2026-10-11)
- S-109e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」 第66条・第67条・第76条・第176条・第180条(確認日 2026-10-14)