仮名加工情報は、名前などを加工して、ほかの情報と照らし合わせない限り特定の個人が分からないようにした情報です。社内の分析などに使っている事業者向けに、令和8年改正で第41条・第42条がどう変わるかを説明します。実質的に新しいのは、連絡先を含む仮名加工情報に対する禁止規定1つです。残りは条文の整理にとどまります。
1. 変わる点: 連絡先を含む仮名加工情報の不適正な取扱いの禁止
第42条に、第4項が新しく加わります。内容は、次のとおりです。
- 対象: 連絡可能個人関連情報の定義(第2条第8項各号)にある記述等が含まれる仮名加工情報。ほかの情報と容易に照らし合わせて、その記述等を特定できるものも含みます。
- 定める方法: 第31条の2を、仮名加工情報取扱事業者による取扱いに準用します。
準用される第31条の2は、2つの禁止です。
- 違法または不当な行為を助長し、または誘発するおそれがある方法で、利用してはならない(第1項)。
- 偽りその他不正の手段で、取得してはならない(第2項)。
第2条第8項各号が挙げる記述等には、住居や勤務先など特定の個人がいる場所の所在地、電話番号、電子メールアドレス、電気通信設備を識別する符号などがあります(郵便・電話・メール等で特定の個人に連絡できるものに限ります)。個人関連情報に対する同じ禁止は、別のページ(連絡可能個人関連情報とは)で整理しています。匿名加工情報にも、同じ内容の第46条の2が新設されます。
2. 変わらない点
仮名加工情報の基本的な取扱いは、新旧対照表で見る限り変わりません。
- 作成: 他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないようにするために、規則で定める基準に従って加工する(第41条第1項)。
- 第三者提供の禁止: 法令に基づく場合を除いて、仮名加工情報である個人データを第三者に提供してはならない(第41条第6項、第42条第1項)。第41条第6項は、第27条第1項・第2項と第28条第1項の規定にかかわらず禁止する書き方で、この禁止の本文は現行と改正後で同じです(後段の読替えの書き方は変わります)。外国にある第三者への提供とも関係します。
- 連絡先の利用禁止: 仮名加工情報に含まれる連絡先その他の情報を使って、電話、郵便、メールなどで連絡したり、訪問したりすることは禁止です(第41条第8項)。
3. 条文の整理だけの変更
次の変更は、第42条の準用の範囲を除いて、書き方の整理です。
- 第41条第1項: 「仮名加工情報」の定義の効く範囲が、「この章及び第六章において同じ」から、除外する条文を明示した書き方(「この章(次条第三項及び第四項、第五十四条第一項並びに第五十八条第二項を除く。)において同じ」)に変わります。
- 第41条第8項: 現行は信書便の事業者を条文に書き出していましたが、改正後は第2条第8項で定義した「信書便」の語を使う書き方に変わります。
- 第42条第1項と第3項: 定義の範囲が「次項及び第三項において同じ」から「この条において同じ」に変わります。準用の書き方も組み替えられます。現行は第23条から第25条まで、第40条、第41条第7項・第8項をまとめて仮名加工情報の取扱いに準用していました。改正後は、第23条から第25条まで・第41条第7項・第8項を「仮名加工情報データベース等を構成するもの」の取扱いに、第40条(苦情の処理)を仮名加工情報の取扱い全般に、それぞれ準用する形に分かれます。対象の範囲が書き分けられているため、自社の仮名加工情報がどちらに当たるかは条文で確認してください。
第41条第4項にも変更があります。新設の第40条の2は、16歳未満の者の個人情報について「本人」を「本人の法定代理人」に読み替える規定です。第41条第4項には、この読替えのうち第21条(利用目的の通知・公表)に関する部分を、仮名加工情報では使わないための読替えが加わります。現行の第4項は、第21条の読替え(通知・公表を公表だけにする)のみを定めています。読替えの全体は16歳未満の読替表にあります。
| 項目 | 改正前 | 改正後 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 連絡先を含む仮名加工情報の不適正利用・不正取得の禁止 | 準用する規定なし | 第42条第4項を新設し、第31条の2を準用する | 変わる |
| 「連絡可能」とされる記述等のうち第2条第8項第5号の範囲 | — | 委員会規則で定める。2026年10月9日の確認時点で規則は公布されていない | 未確定 |
| 作成(第41条第1項) | 規則の基準に従って加工 | 同じ | 変わらない |
| 第三者提供の禁止(第41条第6項、第42条第1項) | 禁止 | 本文は同じ(後段の読替えの書き方のみ変わる) | 変わらない |
| 連絡先の利用禁止(第41条第8項) | 禁止 | 禁止(信書便の書き方が、第2条第8項で定義した語になる) | 変わらない |
| 第42条の準用の書き分け | 第23条から第25条まで、第40条、第41条第7項・第8項をまとめて準用 | 仮名加工情報データベース等を構成するものと、取扱い全般とに書き分ける | 整理のみ |
| 施行日 | — | 公布の日から2年を超えない範囲で政令が定める日。第42条第4項に個別の施行日があるかは未確認 | 未確定 |
出典は、個人情報保護委員会「新旧対照条文」(2026年7月17日)と「改正法の概要」です(出典欄を参照)。
4. いつから
改正法の施行期日は、原則として公布の日から起算して2年を超えない範囲内と、概要資料に書かれています。実際の日付は政令で指定されます。第42条第4項に個別の施行日があるかは、概要資料からは確認できていません。決まり次第、決定タイムラインに追記します。
5. 自社が該当するかを考える順序
- 仮名加工情報として社内で管理している情報があるかを確認する。ない場合、この改正の影響は小さいと考えられます。
- その仮名加工情報に、メールアドレス、電話番号、所在地、端末の識別符号などの連絡先に使える項目が残っていないかを確認する。
- 残っている場合、その項目を、違法または不当な行為を助長するおそれのある方法で使っていないか、偽りの説明で取得していないかを点検する。
- 委員会規則で連絡可能の範囲が示された段階で、もう一度点検する。
立場別に確かめる条文(作る側・渡す側・受ける側)
仮名加工情報の規律は、作る立場と受ける立場で条文が分かれます。次の表は現行条文(e-Gov、2026-10-19取得)の整理で、第42条第4項の新設はどの立場にも加わります。個別の取扱いが適法かの判断は示しません。
| 立場 | 確かめる条文 | 確認点 |
|---|---|---|
| 作る(自社の個人情報から作成する) | 第41条第1項〜第5項、第7項、第8項 | 規則の基準に従った加工(第1項)。削除情報等の安全管理(第2項)。利用目的の変更と公表(第3項・第4項)。不要になった個人データ・削除情報等の消去の努力(第5項)。本人を識別するための照合の禁止(第7項)。連絡手段への利用の禁止(第8項) |
| 渡す(第三者へ提供する) | 第41条第6項、第42条第1項、第2項 | 法令に基づく場合を除き、仮名加工情報の第三者提供は禁止。第42条第2項は、第27条第5項・第6項を準用するため、委託・事業の承継・共同利用に当たる場合は第三者に当たらない扱いが論点になる。どれに当たるかは契約と実態で確かめる |
| 受ける(委託先・承継先・共同利用の相手として取り扱う) | 第42条第2項、第3項 | 第23条から第25条(安全管理、従業者の監督、委託先の監督)と第40条(苦情の処理)が準用される。第41条第7項・第8項の照合の禁止と連絡の禁止も、取り扱う事業者に及ぶ |
| 連絡先を含むものを扱う(令和8年改正) | 第42条第4項(新設)、第31条の2 | 不当な行為を助長・誘発するおそれのある方法での利用の禁止と、偽りその他不正の手段による取得の禁止。「連絡可能」の範囲の一部は規則待ち |
仮名加工情報は、第41条第9項により、利用目的の変更の制限(第17条第2項)、漏えい等報告(第26条)、開示等の請求への対応(第32条から第39条)の規定が適用されません。この点は匿名加工情報や通常の個人データと異なります。
| 項目 | 仮名加工情報 | 匿名加工情報 | 統計作成等の特例(令和8年改正) |
|---|---|---|---|
| 加工の水準 | 他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できない(第41条第1項) | 特定の個人を識別できず、作成に用いた個人情報を復元できない(第43条第1項) | 加工を要件とする仕組みではない。統計情報等の作成にのみ利用されることの担保が条件 |
| 第三者提供 | 原則禁止(第41条第6項、第42条第1項) | 項目と提供方法の公表、提供先への明示で可能(第43条第4項、第44条) | 条件を満たせば、本人同意なしの提供が可能になる(改正)。具体の要件は規則待ち |
| 本人を識別する照合 | 禁止(第41条第7項) | 禁止(第43条第5項、第45条) | 統計情報等の作成以外への利用が禁止される |
| 開示等の請求・漏えい等報告 | 適用除外(第41条第9項) | 個人情報に当たらないため、これらの規定の対象外 | 確認できていない(委員会資料では、規則で公表事項などを定める想定) |
統計作成等の特例の公表事項や対象範囲は、委員会規則で定める想定です。詳しくは統計作成等の特例で整理しています。表の特例の列は、委員会資料の整理(S-22)であり、条文は規則とあわせて確認が必要です。
6. よくある質問
Q1. 仮名加工情報の作成方法や利用の条件は、令和8年改正で変わりますか。
新旧対照表を見る限り、第41条第1項の作成基準の要件や第三者提供の禁止は変わりません。変わるのは、連絡先を含む仮名加工情報への禁止規定の追加(第42条第4項)と、条文の書き方の整理です。
Q2. 連絡先をすべて削った仮名加工情報にも、新しい禁止規定は及びますか。
第42条第4項の対象は、第2条第8項各号の記述等が含まれる仮名加工情報です。そのような記述等が含まれていない場合に及ぶかは、条文の文言から確認してください。
Q3. 匿名加工情報はどうなりますか。
匿名加工情報には、第46条の2が新設されます。第2条第8項各号の記述等が含まれる匿名加工情報の取扱いに、第31条の2が準用されます。
出典
- S-62個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律 新旧対照条文」(PDF・2026年7月17日) 第2条第8項・第31条の2・第41条・第42条・第46条の2(確認日 2026-10-09)
- S-20個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律について」(PDF)(確認日 2026-09-05)
- S-129e-Gov法令検索 個人情報の保護に関する法律 第40条〜第45条(取得 2026-10-19)
- S-02個人情報保護委員会「令和8年改正個人情報保護法」(確認日 2026-09-04)